ミュージカル 素人の遠吠え……ワオ〜ン

[etc.07]>>>> 2008/6/26

ミュージカル
「レベッカ」

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2008年4月6日〜6月30日/シアタークリエ
脚本・歌詞/ミヒャエル。クンツェ
音楽/シルヴェスター・リーヴァイ
演出/山田和也
翻訳・訳詞/竜真知子
観劇日 2008年6月24日マチネ


かのクンツェ&リーヴァイコンビのミュージカル「レベッカ」の日本版を見て来ました。

クンツェ&リーヴァイは「エリザベート」や「モーツァルト!」で有名な作詞家&作曲家です。今回もナンバーがふんだんに使われたミュージカルに仕上がっています。
日本版の演出家は私が大好きな「ダンス・オブ・ヴァンパイア」を手がけた山田和也氏でございます。


……って、そんなカタイ前振りは兎も角として。ぶっちゃけ私のストライクゾーンが明後日の方向にあったようです。ぶっちゃけ……ちょっと物足りなかったというか。造りはとても良かったんだけど、どうも私の好みではなくて、あまり琴線に触れてくれなかったというのが正直な感想でした。

で。飽く迄も私の好みの話として、以下の感想をお読み頂ければ幸いです。

まずさいしょに……
シルビアすげ――――――!
とにかく家政婦柱のダンヴァー夫人役のシルビア・グラブがもうズバ抜けてすげー。クリエ12500円のイチマンエン分はシルビアのもんだ!
歌唱力は言わずもがな! で、さらに演技が。え ん ぎ が!!!! もうあの存在感と威圧感、呪いのような元奥様への偏愛が屈折しまくってて恐いのなんのって、絶対一緒に生活したくないヒトNo.1でございますよマッタク! つうかあのひっつめがよくお似合いで!
おまけに喪服のような黒い服が、まるで白布に落とした黒い染みのようで、どこにいてもめちゃくちゃに存在感あるっつうの。しかも普通の存在感じゃないよ。呪いのような威圧感だよ。

中でも、二度目に『わたし』が天使の置物を割った時のシルビアの演技は素晴らしい。『わたし』が愛によって強く変わり、強権を行使して来たダンヴァー夫人が一転して床に這いつくばって打ちひしがれたように天使の置物を拾う様が、いよいよ奥様の威光が陰ってしまった事を見事に表現していてね。ただ拾うだけじゃないの。喪失感なの。つうか女の弱さっつうか、でもそれでいて惨めじゃないの。ただの喪失感なんだよね。
もっと大仰に芝居していれば惨めに見えたかも知れないけど、なんていうか恋が破れた時の喪失感って感じなんだよなあ。拾う為に這いつくばってるのに、気品が残っているというかね。

もう兎に角シルビアはハマリ役でした!!

感想
で。感想をば。

なんというか全体的にどうもしっくりこなかったというか。噛み合わないパズルをやっているような違和感を感じてしまいました。それぞれのピースはよく出来ているんだけど、みんな噛み合わせが凸部分ばかりで、凹部分のパーツが殆どないような……。(まあ、この感想も私の善がった意見ですので、どうか悪しからず。)

その中で唯一の凹パーツであったと感じられるヒロイン役の大塚ちひろちゃん。ぶっちゃけ私は大塚ちゃんが好きで、彼女を見に行ったようなもんなんですが、イマイチな印象を感じてしまって。
役に合っていない訳ではないし、随分感情移入しながら演技してるんだけど、バシっと届いて来ないというか。う〜む。
ストーリー的に、1幕と2幕とでガラリとヒロインの印象が変わるんだけど、変わってるんだけど、観客がアッパー食らうような変わり方ではなく、ジャブでじわじわ感じるような変化で、正直その変化によってもっともっと引き込んで欲しかった。……随分変わってるんだけどね。なんていうか、目ヂカラが欲しかったって感じかな。演技の目ヂカラが。

で、パーツの部分に戻りますが、なんというかそれぞれの持ち味が噛み合ってないような。なんかマキシム役の山祐とその妻になる『わたし』の大塚ちゃんの持ち味も違って、演技がハモってないというか。
それにファヴェル役の吉野圭吾さんの演技も悪役っぽさを打ちだし過ぎてて、浮き足立ってる印象で。

キャストだけでなく、ナンバーも沢山ありすぎて、感情の見せ場が分散している感じがしてしまいました。なんか歌いすぎない方が、ここぞと言うときに「響く」ような気がするんだよなあ。

あと山祐は主役の時よりも、ちょっと一歩引いた時の方がすごく存在感が出ていいように感じる。「レ・ミゼラブル」では主役だけど、立ち位置としてはコゼットの保護者でもあるし、バルジャン役は包み込むような愛情の表現がすごくいい。
でも今回はかなり前面に出た役なので、ぶっちゃけ演技の大味さが悪い方に目立ってしまっていて、告白のシーンは身が切れるような緊張感、絶望感、というのが薄かったように感じて、見せ場のひとつなのに物足りなかった。

それからストーリーとしては、出来ればダンヴァー夫人と『わたし』の対決のシーンで1幕終わらせてくれたら、めちゃめちゃ緊張感も盛り上がりもある終り方で良かったのになあ、と思った。演出的にもね。
でもストーリーは面白かったなあ。ああいう、死者の威圧感とか過去に何があったか、とかの盛り上げ方はとても興味深かった。モーニングルームでのレベッカの存在感を表現する演出は美しくもあり、サスペンス的でスリリングだった。



……と、ちょっと否定的な感想になってしまいましたが、でもとても興味深い作品で、見て楽しめたことは間違いありません。良作であるけど、私のストライクゾーンではなかった、というだけの事です。
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