winter song
    〜ami〜


 かじかむ手が、答を書き記す前にふと止まる。改めてイコールを書き記し導き出された答に満足して、そうして時計を見上げる。――AM1:20……
 手を摺り合わせながら今日はいつもより冷えるみたい、とちょっとカーテンを開けてみた。
 するとひらひらと何かが舞い落ちて来るのが見えた。

「あ。……雪!」

 はらはらと舞い散る白い綿のようなものが視界をよぎり、ネオンの瞬く東京へと冬の妖精たちが舞い降りて行く。
 雪はまだ降り始めたばかりのようで、地上が白く染まるにはまだまだ時間がかかりそうだけれど、この寒さと降る量からすれば止んでしまう事もないだろうし、朝にはこの町も真っ白な世界へと変わっているに違いない。

 ――まこちゃん、
 雪が降ってるって知ったらきっと嬉しがるわね……

 当たり前のように嬉しがる彼女の顔が瞼に浮かび、まっ先に彼女の顔を思い浮かべた事に、ひとり顔を赤らめた。
 恐らくもう彼女は夢の中。昼食のお弁当を作る為に早起きをする習慣のついてる彼女の起きる時間は相当早くて眠りにつく時間も早い。時計が12時を回る頃、彼女は布団へと潜り込む。
 雪。
 降ってるわよ。
 どこかうきうきしてしまうようなこの気持ちを伝えたいけど、彼女の眠りを妨げてしまうのは可哀想で、一度携帯電話に向けた視線を再び窓の外に移しやる。相変わらず瞼の裏には彼女の顔。
 まこちゃん。
 こんななんでもない事が起こる度に、想いを共有したくていつも思い出してしまう彼女の顔――その事実にはたと気がついて思わず微笑が頬に浮かぶ。

「おやすみなさい、まこちゃん」

 雪は東京の空から舞い降りる。もう夢心地の彼女の上にも……。

fin.








winter song
    〜makoto〜


「どうりで寒いわけだ……」

 目覚まし時計に急かされるように、自分の肩を抱きながら窓に掛かった薄緑の遮光カーテンを捲って、底冷えするような寒さの理由を知る。
 はらはらと、舞い降りる白い妖精たち。

 ――雪。

 雪って元々は水なんだよな……。
 起き抜けの寝ぼけアタマでそんな取り留めもない事を思い、そして当たり前のように浮かぶ顔がひとつ。
 亜美ちゃん。

 恐らくまだ彼女は夢の中だろう。夜遅くまで机にかじり付いている勉強の虫の彼女は、そんなに朝は強くはない。おまけに昼食のお弁当を作る為に早起きをする習慣のついてる自分の起きる時間は相当早い。
 雪。
 降ってるよ。
 何だかうきうきするようなこの気持ちを伝えたいけど、彼女の眠りを妨げてしまうのは可哀想で、一度携帯電話に向けた視線を再び窓の外に移しやる。相変わらず瞼の裏には彼女の顔。
 亜美ちゃん。
 こんななんでもない事が起こる度に、想いを共有したくていつも思い出してしまう彼女の顔――その事実にはたと気がついて思わず苦笑いが頬に浮かぶ。

「おはよう、亜美ちゃん」

 雪は東京の町へと舞い降りる。まだ夢心地の彼女の上にも……。

fin.








POSTSCRIPT
あとがき
★Super Short Story、略してSSS。

★なんとなく短い話が書きたくて書いてみました。今回は同じような話を、まこちゃん、亜美ちゃん、それぞれの視点から書いてみましたが、そういったいかにも「セット」っぽい、カップルっぽいのってやってみたかったんで。お互いがお互いを想ってる、みたいな。
★でもホントはセットにするつもりなくて、最初はただまこちゃん視点の話だけのつもりだったんですが、ふと亜美ちゃんも同じ事考えそうだな〜と思って、急遽亜美ちゃん視点の話も書いてみました。(それにしても私って、急遽とか何となくとかで話考えるの多いな…)

★で、冬なんで雪。雪の話しか思い浮かばんのか、自分。単純だな〜。や〜好きなんで、雪。降るとなんとなく楽しくなっちゃいますよね。東京はあんまり雪が降らないので降ると貴重です。雪合戦したいけど、する相手がいないのが難点。降ったら誰か私と遊んで下さい。

★で、肝心のSSSですが、文章流用しまくってますけど、同じような文章でも微妙〜に変えてたりしてますんで、その辺にも気付いて頂けると嬉しいです。




Waterfall//Saku Takano
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