やきもち


[R18]
※18歳未満の方は御覧にならないでください。


 やわらかな唇。
 わたしはその感触を、甘さを、知っている。その唇がどんなに甘くとろけそうな声でわたしを呼ぶのかも。——それなのに。
 どうしてなのか。
 そうしたかったわけじゃないのに、気が付いた時には彼女の腕の中から逃れていた。
「……そら……?」
 案の定彼女が、突然の拒否に驚いた顔をしてこちらを見下ろしていた。アイスブルーの瞳が混乱したようにしばたたかれ、それからゆっくりと悲しそうに細められた。その視線にいたたまれなくなる。——こんな事がしたいわけじゃないのに。
 彼女からの久方振りのキスを、こんなふうに拒みたかったわけじゃないのに…………。


「……いつまでそうして子供みたいに拗ねているつもり、そら」
「別に……拗ねてなんていませんけど」
 そう言ったものの、拗ねている自覚はあった。けれどそう思っても胸にわだかまっている感情のやり場がなくて、先程と同じように思わず目を逸らした。
 それを見てオフブロードウェイの不死鳥こと、レイラ・ハミルトンがドレッサーの前で短いため息をつく。
「——そう」
 そんな素っ気ない態度にも華がある。彼女が存在するだけで、オフブロードウェイの薄汚れた小さな楽屋さえ雰囲気が変わる。短く切りそろえた金髪は艶やかでまるでシルクのような光沢を放ち、掻き上げると、終演後だというのに、かぐわしい香りが漂った。
 切れ上がった大きな青い瞳、通った鼻筋、完璧な曲線を描く頬のライン、濁りのない鮮やかな金髪。存在感のあるすらりとした長身に優雅な立ち居振る舞いは、見る者を魅了し、一瞬にして虜にしてしまう。そんな外見の麗しさは言わずもがな、自分にもそして他人に対しても容赦のない厳格さが、なお一層彼女の美しさを冷酷なまでに際立たせていた。
 ——が、美しい花には棘があるように、彼女にも見る者を射貫くような鋭い棘があった。とりつく島のない物言いに、彼女のかつての舞台上でのパートナーであった苗木野そらがかすかに肩をすくめる。
(やっぱりレイラさん……恐い)
 ちょっとしたやきもちで拗ねた事を後悔したが、もう遅い。
(うう、一度怒らせると長いんだよね……)
 分かっていたのに、思った事は口に出さずにいられないのが、そらの性分だった。素直と言えば素直だが、考えなしの直球勝負しか出来ない自分が少しうらめしい。
 だが無論、彼女をむやみに怒らせたいわけじゃなかった。
「ただ……」
「ただ……、何?」
 しっとりとした声はだがしかし、まるでナイフのように鋭かった。
 そらは楽屋口のドアの前に突っ立ったまま、なんとか勇気を振り絞ってドレッサーの背中に告げた。
「まさか、あんなシーンがあるとは思ってなくて」
「あんなシーン?」
 脱ぎかけの衣装にかけた彼女の手が止まる。彼女のアイスブルーの瞳がそらを射すくめた。
(ひえええぇぇぇ!)
「どのシーンを言っているのかしら?」
 舞台に厳しい彼女の事、その評価に対する姿勢さえも厳しい。
「い、いえっ! 不満とかそういうんじゃなくて! それに舞台自体に文句があるとかでもなくって、ただびっくりして……! 舞台はもう、超カンドーしてっ。レイラさん素敵だし相変わらず情熱的だし、もうやっぱさすがレイラさんだなーって惚れ直したって言うか、あ、わたしが惚れ直すなんておこがまし」
「言い訳はいいわ。簡潔に言って頂戴」
「ひゃいっ!」
 まさにヘビに睨まれたカエルだ。猫とネズミに置き換えてもいい。
 そらはぐっと息を吸い込むと、懸命に声を絞り出した。
「あの、二幕終盤のヒロインが男性に想いを告げる場面で……、れ、レイラさんがそのっ……、相手役の方に……っ!」
「ああ、キスシーンの事ね」
「………………はぃ……」
 あっさりとすっぱりときっぱりと言ってのけるレイラ。明確に口にしてしまいたくなくて、曖昧に言おうとした自分が情けないやら恥ずかしいやらで、そらはがっくりと肩を落とし、いたたまれなくなる。
「そのシーンの一体どこが不満なのかしら?」
「えーと、それをわたしの口から説明しろと……」
「そうね。はっきり言って頂戴」
「…………」
 そらの額に汗が一筋流れた。
 ふっつーお付き合いしている人が、お芝居とはいえ目の前で自分以外の人とキスしてたら、へこみますよね? そう言いたい気持ちが胸の中でぐちゃぐちゃになる。
 恐らく彼女には舞台の出来不出来だけが最も重要なのであって、それはプライベートとは完全に切り離されているのだろう。
(それは正しい……。めっちゃ正しいと思います、レイラさん……)
 そら自身、カレイドステージという華やかな舞台に立つプレーヤーだ。だからこそ、舞台裏の個人的な問題やプライベートなあれやこれやは、お客様の前に持ち出すべきではないと分かっているし、またその逆も然りだ。舞台上の人物と演技者はイコールではないのだから。
 だが、感情は機械のようにコントロール出来ないし、この気持ちは頭で考えてどうにか出来るものでもない。
 それに件のシーンが今回の舞台で非常に必要なシーンであった事も重々承知している。実際そらは彼女の情熱的な演技に引き込まれ、まるで主人公にでもなったかのような気持ちで、愛しさと切なさとで胸が締め付けられた。
(だけど……)
 舞台上での濃厚なキスがよみがえる。裏切りと奸計によって絶望の淵にある主人公が断ち切れない想いを胸に、切なく激しく恋人とキスを交わす場面だ。クライマックスへと導く重要なシーン。
 けれど。
 自分はレイラ・ハミルトンのパートナーだという想いがある。
 かつては舞台上での。
 今は。

 ——プライベートでの。

 初めて出会った時は、手の届かない憧れのスターだった。カレイドステージに立つ圧倒的な存在感を示すトップスター、レイラ・ハミルトン。
 やがてそらも彼女と同じステージに立つようになったものの、実力は雲泥の差。なんとか追いつこうと不屈の努力を繰り返し、ようやく彼女にも認められようかという時、幻の大技に挑戦した際に負った傷が元で、彼女だけがステージを後にする事になってしまった。
 ——が彼女はその代表技である「ゴールデン・フェニックス」の名に恥じることのない本当の不死鳥となった。カレイドステージから引退してなお、オフブロードウェイという新たなステージを手に入れた彼女は、精力的に舞台に立ったのである。
 それから数カ月。いつしか互いの距離が変わっていた。まるで水が流れに沿って姿形を変えるように、自然に。尊敬も信頼も、憧れる気持ちも、それまで共に過ごして来た日々のすべてが、朝日が昇るようにためらいも淀みもなく、優しくやわらかに愛情へと変わった。
 ステージ上で過ごした時間。
 舞台裏で共に重ねた日々。
 かけがえのない時間はかけがえのない関係を与えてくれた。
 ——でも。
 最初の頃は憧れの存在であったレイラと特別な関係になれた事に舞い上がっており、寸暇を惜しみ共に時を過ごし見つめ合っているだけで幸せだった。——でも。
 そらはレイラを見上げた。その視線に気づいたレイラもこちらを見据えた。
 カレイドステージのある西海岸のケープメリーと、この東海岸のブロードウェイとでは飛行機で数時間、距離にして2500マイル以上離れているし、互いの公演期間がずれているため、おいそれとは会えない。今日だって、実に一ヶ月半以上振りの再会なのだ。本当なら、楽屋口を開けてすぐに彼女の胸に飛び込みたかった。
 ——だけど。
 ……観てしまった。
 共演者との濃厚なキスシーンを。
(おまけにそれをわたしの口から説明しろって……)
 もちろん、そらだってこんなのは幼稚なやきもちだって事ぐらい分かっていた。あれはあくまでも舞台上での演技なのだから、と。
 けれどそんな気持ちがうまく飲み込める程、初めての恋に器用になんてなれなかった。
 おまけに恐らく舞台馬鹿の彼女は、なぜパートナーが不満を抱いているのか本当に分かってはいない。レイラは真っ直ぐにこちらを見据えている。痛い程に。常に妥協を許さない彼女らしい強い視線で。
 そらは小さく、けれど深く呼吸を繰り返すと、ゆっくりと想いを口にした。
「舞台は……本当に素晴らしかったです。いつも通りの……ううん、いつも以上に情熱的なレイラさんで、……本当に圧倒されました。わたしもステージは違うけれど、同じ舞台に立つ人間として尊敬して憧れて……でも、正直負けたくないって想う気持ちもあって。本当に言葉に出来ないくらい、圧倒されました。……でも」
「でも?」
 あっさりと先を促す彼女がうらめしかった。
 でも、そうじゃない。
 本当に嫌だったのは、こんなふうにやきもちをやいてしまう自分に対してだった。
 こんなどうしようもないやきもちでどうしようもない事を言ってしまう自分が情けなくて。本当はこんな事、言いたくないのに。素晴らしい舞台に賛辞を送りたいのに。ただ黙って彼女の胸に飛び込みたいのに。こんな風に問いただされて。
 堪えていたはずの涙が浮かんだ。
 結局それ以上何も言えなかった。
 ついに痺れを切らしたのか、不意に彼女が名を呼んだ。
「——そら」
「は、はいっ」
 思わず反射的に背筋を伸ばして返事してしまう。注意やお小言だろうと、それでも彼女に名を呼ばれて見つめられたら、嬉しくないわけがない。
「もういいわ。着替えるから適当に時間をつぶしていて頂戴」
「…………はい」
 背を向けた彼女が、それ以上何かを言う事はなかった。

 きっと。
 完全に呆れられてしまったのだ。つまらないやきもちを焼くようなふがいないパートナーだと、落胆させてしまった。
 そらの中で、寂しさよりも悔しさが湧き上がる。結局は、自分はいつまでも彼女の背中を追うだけでしかないのか。
「待たせたわね」
「え? あ、いえ……」
 楽屋で所在無く立っているよりはと思って、楽屋口の前で、他のファンの人たちの陰で、彼女が出て来るのを待っていたのだが、楽屋口から出て来た途端、まるで超能力かと思える的確さで、レイラがそらを見つけて声をかけた。  そのまま、同じく楽屋口から出て来たマッコリーから荷物を受け取ると、有無を言わせず、待たせていた車に押し込まれてしまう。他のファンは何事かと目を丸くしていたが、驚いたのはこちらの方だ。羨望の眼差しを向けられたまま、楽屋口の景色が背後に遠のいていく。
「……あの、わたしがあそこにいるって、よく分かりましたね」
 楽屋口の前は出演者たちが出て来るのを待って、沢山のファンたちでごった返していた。その陰の奥まった場所にいた自分が、どうして分かったのか。そらは慣れない高級車の柔らかなシートの上で、居心地悪そうにしながら、隣のシートのレイラをちらりと見上げた。
「分かるわよ?」
 さも当然だと言わんばかりに彼女がこちらを見下ろす。何をおかしな事を言っているのかと言わんばかりに。
 ……いや、分かんないっす、フツー。
「……あの、マッコリーさんは…?」
 これまた当然とばかりに彼女はこの黒塗りの高級車には乗らなかった。
「……マッコリーに何か用事でもあったの?」
 ……いや、ないっすけど。
 なんというかこれまでの彼女の感じからすると、ハミルトンホテルのペントハウスまで一緒に帰るんだろうと思ってたんですけど。…………。
 何が何やら分からない。
 お陰ですねてすっかりひねくれてしまった気持ちのまま、何も言えなくなってしまった。……久しぶりの再会なのに。
 もともと彼女の口数は多い方ではない。必要最低限の事しか口にしないし、口にしたとしても余計な事は言わないし。こんな時はどうしてもだんまりになってしまう。……あれこれお話したいのに。
 車はゆったりとした上り坂を上っている。何げなく窓の外に視線をやると、華やかな喧噪が視界のスクリーンを流れていく。数多の劇場たちのネオン、熱に浮かされたような人々。ここは押しも押されぬ世界有数の劇場街で、隣にはその舞台に立つ、レイラ・ハミルトンその人がいて。
 うきうきするはずの五日間の休暇のはずだったのに、無言のままで坂を登って行く事になるなんて。
 話がしたいのに。
 舞台、とっても素敵でした。特にあの場面はびっくりするような演出で、ミヤに見せたいくらいで。すごくどきどきっしちゃいました。そうそう、今回のカレイドステージもミヤやみんなが張り切っていて、すごく評判が良いんですよ。わたしの演技も新聞で褒められちゃって。
 ……言いたい事はいっぱいあったのに。
 この一月半の間、手紙では伝え切れない事がたくさんあったのに。
 隣に座る彼女の細い指先に、いたずらっぽく指をからませてほほ笑み合いたいのに。
 自分のふがいなさに、本当に悔しくなる。
 やがて、窓に映し出された場面が切り替わった。見慣れたいつものルートではなく、見知らぬビル街にあれ、と首をひねった。
「ここ……どこですか? ホテルに帰るんじゃ……?」
 てっきりハミルトンホテルに帰るものだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。車に乗り込んだ時には何も言っていなかったから、お抱え運転手さんにはあらかじめ行き先を告げてあったのだろう。
「来れば分かるわよ」
 そっけなく答える彼女の真意は、結局そらには分からず終いだった。

 無言のまま連れてこられたのは、ハミルトンホテルに勝るとも劣らない某有名一流ホテルのレストランだった。
 レイラが名を告げると、恭しく奥へと通される。その際、そらはようやく合点が入った。
(そういう事だったんだ……!)
 というのも、ホテルに来る前に、そらはレイラに連れられ、上から下まで服を一式買い揃えさせられていた。値段が一桁も二桁も違うようなやつを。もちろん支払いはレイラさん。
 誕生日でもないのにどうして、との問いに彼女はいいから、としか言わなかった。——が。一流レストランでディナーをいただくため、とあらば合点が行く。ドレスコードというやつだ。確かにオーバーオールで入店なんてとてもじゃないけれど、無理だ。
 いや、それでもこんな高価な服をぽんと買っちゃうなんて、どうかしてると思うけど。さすがはハミルトン家の御令嬢だ。
 ——と、そらは息を飲んだ。
「すごい……」
 そらは瞬きするのも忘れてその情景に魅入った。
 通されたのは店の奥の方の窓際席、ガラス張りの向こうには、眺めるのが怖いくらい、吸い込まれそうなほど幻想的な眺めが広がっていた。赤と青のコントラスト。眼前に広がる夕焼けが、とても言葉では言い表す事の出来ないくらい複雑な階調でグラデーションを作り出し、林立するビル群に融け込まんとしていた。
 陽光の最後の一滴に夜の藍が混じり合う。
 その中心で鮮やかな夕陽が、宵の情熱で燃え盛っていた。
 ——レイラさんみたい。
「綺麗……」
 幻想的で、それでいて情熱的な眺めに呆然と立ち尽くしてしまう。それ程までに、美しい景色だった。
 その時そらはようやく思い至る。ここは夜景の素晴らしさで世界的に有名なホテルだったのだ。確か一番安い部屋だって目が飛び出すほどの値段だったはずだ。
 まるで子供みたいに眺めていると、彼女がくすりと笑った。
「機嫌は直ったかしら、そら?」
「そんな、機嫌なんて……!」
 まさか機嫌をそこねた自分のために、急遽こんなサプライズを用意したのだろうか。
 申し訳なさと戸惑いで首を振ると、何げない仕草で着席を促された。気が付くと給仕さんが椅子を引いたまま、ちょっぴり困っている所だった。
 そらは顔を真っ赤に染めて、買ってもらったばかりのワンピースの裾を気にしつつ、急いで着席した。
「たまには、こういうのもいいでしょう」
「あ、はい。……でもどうして……?」
 思いがけないサプライズにふわふわした高揚感を感じながら訊ねると、彼女が柔らかく笑みを形作った。舞台で見せる強気な笑みではなく、ふたりきりの時に不意に見せる、固さの取れた笑みを。
「さあ、どうしてかしらね」
 すっかり怒らせてしまったものと思い込んでいたのに、数時間振り見た彼女の笑みは、すっかりそらを虜にさせてしまった。だから、気づかなかったのだ、彼女のアイスブルーの瞳の奥に隠されたその真意に——。

 それから慣れぬ場で大層緊張しながらもディナーをたいらげ、レストランを後にした時、下りのエレベーターに乗るものと思っていたそらが首を傾げた。
 レイラに勧められるまま何杯かワインを口にしていたため、ちょっぴり足元がふわふわする。
「ハミルトンホテルに帰るんじゃないんですか……?」
「……あなたにさっき、機嫌は直ったかと聞いたわよね?」
「……はい……?」
 レイラの白い細い指先は、エレベーターの高層階を指している。次いで彼女がバックから取り出したのは、このホテルのロゴの入ったカードキーだった。
 首をひねったそらが笑顔のまま固まる。
 それを見て満足そうに、舞台上よりもなお妖艶な笑みを浮かべる彼女。
「残念ながらわたしの機嫌は直ってはいないの」

「ま、待って……ん、くだ……」
「延々、お預けを……くらわせた上に、まだ待たせるつもり?」
 スイートルームのドアを閉めた途端、彼女に抱きすくめられてしまう。一七三センチもの長身で抱きすくめられては、そらとて逃げられはしない。抱き締めて、そのまま深く息を吸い込み、首筋に頬をうずめる彼女。
「……そら」
「レ……ぅん」
 彼女の名を呼ぼうとして、そのまま唇をふさがれた。
 突然の深いキスに驚く間もなく口の中を愛撫される。口の中も、それから鼻腔も彼女の香りでいっぱいになる。
「好きよ、そら。愛してる」
「レ、ラ、さん……んっ」
 その言葉通り深く愛される。息をする間もない。
 密着した身体に伝わる熱に、キスの愛撫と相俟って、瞬く間に彼女の色に染められていく。
 ずっと触れられなかった彼女のぬくもりがいとおしい。触れる肌と肌が熱かった。
「レイラ……さん」
 彼女の手がドレスのスカートをまさぐるのが分かった。薄手のドレス越しに太ももに触れる指に、そらが小さな悲鳴を上げた。
「だ、ダメっで、……ぅん!」
「どうして?」
「だって、ここ、玄関……」
 大きく開いた背中に触れるドアの感触が冷たい。そらは身をよじって答えた。
「そうね、確かにあまり行儀がいいとは言えないわ、ね。でも、あなたがおかしなやきもちをやいた……お仕置きよ」
 そう言って細い指が器用にドレスをたくし上げる。乱れたドレスの裾からそらの健康的な太ももが露になり、そらの顔が赤く染まった。
「ちょ……、お、お仕置き?」
「たまにはいいわね、こういうのも。あなたの反応も新鮮で」
「まっ、真顔で言わないで下さいっ!」
「とってもキュートよ、そら」
 泣く子も黙る美人に真顔で言われては、返す言葉もない。
 そのまま口づけられ、甘い言葉と共に口の中に甘い味が広がる。その間に手が伸び、脚をまさぐられた。ぴくりと肩が跳ねる。慌てて閉じようとして、何かに阻まれた。
 それがレイラの脚だと気付いて、そらが息を飲む。開いた両脚の間に彼女の脚が割り込んでいるそのあまりの姿態に、そらの顔が羞恥に染まる。
「な……」
「これで動けないわね」
 楽しげに彼女がほほ笑む。短く切り揃えられた髪がさらりと揺れた。
 身長差は一〇センチ以上。逃げようとすればする程、彼女の長い脚が深く食い込んで来る。密着する敏感な部分が深く圧迫されていく。
 そしてそちらに気を取られていると、今度は唇を奪われた。
「んん……!」
 吸われ、絡められ、激しく愛撫される。
 やがておとがいを上げられ、白い喉をきつく吸われた。あっと驚いて抵抗するもあっさりと阻まれる。
「跡はつけないわ。……見えるところには」
 ほっとする間もなく、その言葉にぎょっとする。
 唇が喉元を上下し、その感触に身体が震えてしまう。そんな反応すらいとおしむように抱き締められた。
「……ベッドの方がいい?」
 甘い声で甘く尋ねられて、それだけでとろけてしまいそうだった。それに。
 強く圧迫されたそこも、とろけてしまう寸前で。
 なんとかこくりとうなずく。
 すると、彼女が優しくほほ笑んだ。
「いい子ね、そら」
 ——ずるい。
 こんな時に、そんなふうにほほ笑むなんて。思わずあの日の笑顔が重なる。ブロードウェイのホテルで、わたしがわたしのフェニックスを見つけたあの日。
 この手で、長かったレイラさんの髪を切ったあの日。
 あの時は、夕焼けの中だったけど。
 ——今は窓の外に摩天楼の夜景が広がっている。

「あっ」
 すぐにベッドに押し倒されるのだとばかり思っていたら、違った。
 窓のすぐそばに立たされ、ドレスに手をかけられた。
 ……これは。
「だ、ダメです、レイラさん! こんな……!」
 乱れたドレスの胸元を慌ててしっかりと押さえる。
「言ったでしょ、これはお仕置きだって。……それにわたしの気分を損ねたのは誰だったかしら? ……良い眺めよ、そら?」
 どっちがですか!
 窓の外の景色の事か、それとも……。レイラのアイスブルーの視線が肌へと突き刺さる。
 いじわるくつぶやく彼女。意地悪なのはお手の物だ。何せ普段から怖いんだから、真顔で言われたら拒むなんて出来ない。
 そらは少し振り返り、夜景の広がる窓の外に目をやった。大きく開いた窓。何も阻む物はない。
「……ここで脱ぎなさい。それとも——」
 裾をゆったりと持ち上げられる。夜景に白い脚が浮かび上がり、羞恥にそらの頬が染まる。
「脱がされたいのかしら?」
 妖艶な笑みに、背筋を冷たい快感が駆け抜けた。
 レイラ・ハミルトンの視線。
 それがくまなく自分の身体を舐る。
 自然と身体が熱を持ち始める。——勧められるままに、あんなにワイン飲むんじゃなかった。けれど後悔してももう遅い。
 そっと手が伸びて来た。ゆっくりとドレスの裾をたぐる。
「知ってるでしょう? 女性に服を贈るのは……それを脱がせるためだって」
 その手がするりと背中をはい上がり、ファスナーを下ろされる。そして促すようにそのまま数歩下がる彼女。
「さあ、そら、よく見せて頂戴」
 ふわりと笑みを浮かべる彼女。
 彼女の「頂戴」はお願いではない。——命令だ。
 今まで何度となく、彼女に「頂戴」と言われて来た。それを拒めた事は——一度としてない。
 猛烈に鼓動が速い。ここは高層階とは言え、それに部屋の中は外の夜景よりも暗いとはいえ、カーテンなどは引かれていない。その窓の前でドレスを脱ぐなんて出来るわけがない。
 ステージ上で味わう緊張とは全く違った。ステージで何百もの観客に見られるのとは質の違った緊張がそらを縛る。
 けれど、——身体が拒めない。
 レイラ・ハミルトンに求められては、拒むなんて出来なかった。
 人を引き付けてやまない魅力。彼女が誰よりも努力をして勝ち得てきたもの。それがそらを引き付けて離さないのだ。
 そらは真っ赤になってうつむいたまま、レイラの方へと向き直る。そしてゆっくりと腕を下ろした。
 すると重力に引かれ、あっさりとドレスが落ちる。
 さらされた柔肌をスクリーンにして夜景が浮かび上がる。
「綺麗よ、そら」
 彼女が腕を回してブラのホックを取ると、それもあっさりと落ちる。やわらかく抱き締められて、耳の付け根あたりにキスを落とされる。くすぐったいのに、恥ずかしくて仕方ないのに、甘やかな感覚が湧き上がる。胸の高鳴りが大きくなった。
 レイラの手がやわらかな白い腹部をなぞり、下りて行く。次に起こる事を予感してそらが抵抗するものの、有無を言わせない。下ろした手の先を脚の付け根の谷間に滑らせ、そっとほほ笑んだ。
 濡れているわよ。
 声には出さず、唇の動きだけで指摘され、顔から火の出る思いがした。そんなふうにしたのは誰だと問い詰めてやりたいが、そんな事が出来るくらいなら、こんな事で顔を真っ赤にしたりしないだろう。
 彼女の指が布越しに敏感になった部分をもてあそぶ。火照っているところへ、ぐにぐにといじられて、身体が反応してしまう。
「……ぁっ」
 酔いもあってこらえ切れなくて、思わず声が出てしまう。恥ずかしくてたまらないのに、もっととせがみたい自分もいて。
 思わず彼女にしがみついた。
「レイラさん……っ」
 一カ月半振りの彼女のにおい。
 肌。
 感触。
 ぬくもり。
 意地悪な視線。
 優雅な手つき。
 艶やかな声。
「脱いで」
 耳元で囁かれ、身体の芯がしびれる。ずっと直に聞きたかった声で命令されては拒めない。
 そらは、真っ赤になりながら、自らの下着に手をかけた。それでもなおそれを下ろせないでいると、彼女の手が下着と肌の間に忍び込んで来た。そのまま下ろされはぎ取られてしまう。
 今やそらは何一つ纏っていなかった。
「レ……ラ、さん……」
「そら」
 愛しい人の声に今にもとろけてしまいそうだった。
 恋愛に奥手……というか、よく言えば純情、悪く言えば鈍感なそらにとって、恋愛のこうした肉体的なつながりは刺激的過ぎて、いまいち積極的になりきれないところがあった。求められればもちろん嬉しいし応じるが、自ら彼女を求めた事はなかった。
 一緒にいれば手を繋ぎたくなるし、抱き締めても欲しい。でも、こうした行為はなんだか恥ずかしい事みたいで、欲求よりも自制心がはたらいてしまうのだった。
 彼女が身に纏っていたドレスとそして下着を脱いだ。引き締まった完璧な美しさに恍惚となる。けれど小さな心配がそらの胸に浮かんだ。
「……痩せました?」
 すると場違いな台詞に彼女が曖昧な笑みを浮かべた。
「公演後だから」
 そらの知っているレイラより、ずっと細い。浮き出た鎖骨に触れて訊ねると、彼女がばつが悪そうに苦笑した。
 舞台は照明だって熱いし、パフォーマンスの比率の大きな彼女の舞台ならなおさらハードだ。どんなに食べても公演が二週間も続けば体重は落ちてしまうし、そら自身も毎度同じ経験をしている。
 自分の事なら全然心配なんてしないのに、好きな人なら体重が一キロ落ちただけでこんなに心配になるなんて。
 そらはぎゅっとレイラを抱き締めた。
「そら?」
「……あんまり無理しないで下さい。レイラさんの事だから体調管理は万全だろうけど……」
「心配してくれてるの?」
 その問いにこくりとうなずく。
 大事な人だから。
 無茶ばっかりする人だから。
 こういう時はあんまり積極的になれないし、ちゃんと態度で示してあげられないけど、だからせめて、想いを込めて抱き締める。
「あの……、今更だけどお疲れさまでした。えっと、公演で疲れてると思うけど……」
 真っ赤な顔で告げる。
「す、好きにして、……いいです、から」
 そう言って、口づける。
 せめて、ふたりきりの時だけは思うままに自由に。
 お仕置きがしたいなら、甘んじて受けるから。
 珍しく驚いた表情を浮かべるレイラ。だからこそ言ってしまった言葉に余計恥ずかしくなってしまう。自分から言った事なのに、もう逃げ出したくて仕方ない。顔から火が出そうだ。
 何か言って欲しい。
 そう思っていたら、いきなり深くキスされた。
 そして彼女に手を引かれ、乱暴にベッドへと押し倒された。
 ギシリとベッドが鳴く。
「あの、レイラさ——ぅんっ」
 胸の膨らみを口に含まれ、おかしな声が出てしまう。突然の性急さに戸惑うが、久方ぶりの刺激に身体が素直に反応してしまう。けれど何度経験してもこういった事に慣れる事がない。どうしても先に恥ずかしさが立ってしまう。——が、次のレイラの言葉にぞくりと粟立った。
「心配しないで。あなたを抱く体力ぐらい残っているから」
 あまり可愛い事言わないで頂戴。
 そう言って、ずっと深く口づけられる。
「自制出来なくなるじゃない」
 言葉どおり、いきなり敏感な部分に指を押し付けられ、ぬかるんだそこを強く押された。突然の刺激にそらの身体がはねる。唇も、下の唇も同時にもてあそばれ、数杯のワインで火照った身体に甘い刺激が駆け抜けた。細い指が小さな突起をこする。身体の火照り具合を確かめるように、まさぐられる。
「ひゃぁんっ!」
「可愛い声」
「んっんん! ……やぁっ!」
 ぐりぐりと指を押し付けられ、前戯に敏感になっていた小さな芽が悲鳴を上げる。あふれた愛液がそこまで染み出しているのが彼女の指の動きで分かる。二人きりになってまだ十分くらいしか経ってないのに。その反応を悦しみつつ、レイラがにっこりとほほ笑んだ。
「お預けされた分、可愛がってあげるわ、そら」
 ぐにぐにといじられながら大きく脚を開かせられる。一八〇度の開脚だってお手の物だから、無理なく開いた。そこへレイラが脚を抱えるようにしてのしかかる。
「や、やだ! 見ないで下さい!」
「自分の発言には責任を持ちなさい。好きにしていいと言ったのはどの口かしら」
 そう言って、指先が唇をなぞる。
「言ったのはこちらの唇? それとも……」
 こっちのかしら?
 囁いて唇が触れたのは、愛液の溢れたそこで。
「だめ……っ!」
 舌が、割れ目をなぞる。
 ぬめった舌がそこを撫で上げ、小さな突起を刺激する。恥ずかしくてたまらないのに、散々視線や言葉でいじめられていた分、感じてしまう。ぬるぬると舌がいじわるく往復する。
「や……ぁ、あぁ……」
 真っ赤になりつつも、素直なそらがそう言われたら何も抵抗出来ないのを知った上で言っているのだから、性質が悪い。レイラは、こらえるように眉根を寄せるそらの表情を堪能しつつ、大きく開かれたそこに、今度は指をあてがった。あふれる愛液を潤滑油にぐりぐりと指を上下させると、それだけでぞらの身体がビクビクと震えた。どこをどうすればそらがどう感じるのかが分かる。彼女が素直なのは性格だけではないと知ったのは、彼女の身体を知ってすぐの事だった。
「……ぁんんんっ!」
 懸命に声を殺そうとしているのが可愛くてたまらない。だからこそレイラは、もっとそらを味わいたくてさらに指を激しく震わせた。ぬかるんだ谷間はほんの少しの刺激にも弱い事を知っているのに、ぐちゅぐちゅと音が立つ程にかきまわした。
 レイラとて、始めから肉体的欲求が強かったわけではない。本来ならばずっと淡泊だったろうし、実際そらに恋に落ちるまではそういった事に一切興味はなかった。自分でも認めざるを得ないが、舞台馬鹿なのである。
 それが一度そらを知ってしまったら、止め処がなくなった。
 もともと、何事においても突き詰めてしまわないと気が済まないのが災いして、身体の交わりにおいてもそれが遺憾なく発揮されたのだ。
 それにそらというのは、不思議な魅力があった。演技においてもそうなのだが、危なっかしいくせに人を夢中にさせる何かがあるのだ。今も懸命にこらえて抵抗しつつ、それでいて刺激に身体を震えさせる様は、なんとも言えない魅力があった。
「あっ……ぅん、んっ」
 上気した頬に触れると、張り詰めていた緊張のためにまなじりに涙が浮かぶ。唇でそれを拭い唇をさらうと、控えめに吸いついて来た。が、少し指の動きを速めてやると、それだけで口元がおろそかになって、小さく鳴いた。
「やっ、あっ、ひゃあっ!」
 ぐいっと身体ごと押し付けるように手を圧着させ、身体を揺らす。するとリズムを合わせ切なげに声を漏らす。
「あっ、あっ、やっ、だめっ! そんなの……も、いっちゃ……っ」
「い、イきたいの?」
 意地悪くうかがうと、ためらった後、恥ずかしそうにうなずくそら。レイラは愉しげに微笑むと、いたいけな恋人に申し付けた。
「そう、じゃあキスして頂戴。気持ちを込めてね」
 それはお願いという名の命令で。
 いたたまれず目を泳がせた後、意を決するように可愛らしく目をつぶると、そっと開いて、唇を寄せて来る。
 そして少しでも満足してもらえるようにと、懸命に舌をからませてくる。それは決して情熱的なキスではなかったけれど、とびきり甘くて。
 レイラはその舌を受け止め、からませ返すと、指を動かした。割れ目に沿って指を下ろし、ゆっくりと深い谷間に滑り込ませる。
 白く長い指が深く潜り込む。
「ぅんっ……!」
 焦らされ続けたところへ、ご褒美をもらい可愛らしく鳴くから。
 意地悪をしてしまいたくなる。
「そら」
 名を呼び、指を動かす。
「やあぁあああ……っ」
 けれどゆっくりと。
 それでいて複雑に指でかき回し、そらの奥を責める。
「あぅん……、あ、いぅ、うん」
 焦れるのか、か細い声で鳴くそら。真っ赤な顔でまなじりに涙を浮かべて。
 それに反し、濡れそぼった割れ目はひくひくと激しく小刻みな痙攣を繰り返している。本当はもうイきたくてたまらないのが手に取るように分かる。
「……っ、いっ、あっ、ぅんっ」
 ちゅぷ、と下の口が鳴いた。愛液があふれ出し、切ない吐息が浅く繰り返される。イってしまいたいのに、イかせてもらえなくて、身体を震わせるしか出来ないそらは、可愛くて。指がうごめくたび、もっとと身体が悲鳴を上げる。何もかも張り詰めた身体は、まるでステージ上みたいで。
 そして限界まで張り詰めた時。
 レイラはゆっくりと指を引き抜いた。
 身体を震わせたまま悲しそうに目を見開くそら。
 レイラは引き抜いた指を口に含み、そらの目の前で丹念に味わうと、まだたっぷりと愛液のからみついたその指を自分の秘所に宛てがった。そしてそらを愛する事であふれ出した愛液でぐっしょりと濡れそぼった割れ目に押し込む。と、そっと指を動かした。二人の愛液が混じり合う。
「ああ……そら」
 始めはゆっくりと。次第に激しさを増して。
 そら以上に焦れていたために、少し指を動かすだけで、指の動きに合わせて愛液が湧き上がって来る。
 そして。
 自らの愛液で汚れ切ったそらの割れ目に口づける。呼吸の荒いそらが驚きとぬめる感触とに、身体を震わせた。
 谷間に差し込まれた舌は、その奥にある小さな蕾を直に捕らえ、吸い付いた。ぬめる感触に腰が震える。本当に今にも達してしまいそうで。やわらかくてあたたかくて、たまらない。
「レイラ……さぁんっ」
 舌のねっとりとした刺激に、限界を迎え損なったそらの秘所がそれまで以上に激しく痙攣した。そして舌が、秘孔へと潜り込む。舌の奥へ奥へと入り込む感触に身体が跳ねる。まるで生き物のようにそらの内側を責めるやわらかな舌。うごめくそれは、的確にそらを登り詰めさせて。呼吸の荒くなったレイラの息が濡れた恥部を刺激する。
「あっ、ぅん、んっ……レ……ラさんっ!」
 そらの引き締まったふとももがレイラに押し付けられる。レイラはその脚を抱え上げ、閉じかける脚を開かせて、やわらかな茂みの奥に舌をねじ込んだ。
 そらの唇から絶え間無くこぼれ出すあえぎ声は、まるで甘い媚薬だ。
「レイラさぁ……ん、んっ、ぁんっ、あっ、ぅんっ」
 舌の動きに合わせ、そらが鳴く。限界が近かった。
 会えなかった一月半。
 電話越しでしか聞けなかった声。
 やきもちでキスさえさせてもらえなかった数時間。
 すべてが融けて混じり合う。
「ひぁああん」
 いつもは恥ずかしがって声を上げたがらないそらが、甘い悲鳴を上げた。


「あ……ぃやああぁぁぁぁぁん……っ」
「……まだ、寝るには早いわよ」
 奥へと潜り込んだ指の動きと、大きく張詰めた芽とを同時に責めらせて、レイラにまたがった体のそらの身体がくったりと沈む。
 今夜何度目かの絶頂は、そらに限界を知らせていた。こらえ切れずに、ほとんどレイラの顔にのしかかるようにくずおれる。
 イかされてイかされて、もう腰が立たなかった。
 濡れた秘所をレイラの胸元に押し付けたまま、くったりと脱力する。すると苦笑したレイラがようやくそらを解放した。ベッドの隅に追いやられていた枕を正常な位置に戻すと、横になり、そらを優しく抱き抱えた。
「疲れた?」
「……はぃ……」
 けれど身体は限界まで疲労しているにもかかわらず、レイラに抱き締められると、それだけでおだやかな気持ちになって来るから不思議だ。豊かな胸はやわらかくあたたかい。それにとっても肌になじむのだ。
「……とっても可愛かったわよ、そら」
「……だからそういう事、真顔で言わないで下さいってば」
 普段は誰よりも厳しいし、おまけに必要最低限の事しか言わないから余計にきつく感じるけど、ふたりきりの時はこちらが面食らう程恥ずかしい事も言ってのけて。
 頬が熱くなる。
 恥ずかしいけど嬉しい。嬉しいけど恥ずかしい。
 おまけにやきもちをやいたお仕置きなんて言い出して、どうしようかと焦ったりもしたけど。
 幸せな気持ちで、そっと目を閉じる。
 結局はいつものレイラさんで。……クールだけど情熱的で。優しいけど激しくて。
 心も身体も心地よい疲労でいっぱいになる。
 もうすぐ陽が昇る。
「……おやすみなさい、そら」
 優しい声に身をゆだねる。
 公演は昨日で終わり。今朝は自然と目を覚ますまでこうしてレイラさんとゆっくり眠っていよう。
 おやすみなさい、レイラさん。
「……愛してるわ、そら」
 ……わたしもです。
 でも、疲れて言えなくて。
 レイラさんがくすりと笑った気がした。





END



あとがき

★ひさびさにサイト更新です。
★「カレイドスター」のレイそらです。友人にすすめられて見始めたのですが、もともと熱い作品が大好きなので、がっつりハマってしまいました。ええ、昔から利用している某私鉄のアナウンス聴くだけで幸せになれる程に。

★ってか私、「やきもち」ってタイトルの話多すぎw どんだけやきもちやくキャラが好きなんだw
★あと元ネタ(?)はOVAの「Legend of Phoenix」ですけども、名作ですね。名作ですね。名作ですね。…大変感動いたしました。演出もすばらしいし、映像も綺麗。それになにより作り手の情熱が伝わってくる…!うおおおお!
★そんな思いを込めて書いたレイそらです(それで18禁かよ、どーなんだよ)